本図の画題は、仏陀から第一の弟子、摩訶迦葉(まかかしょう)に正法が伝えられた故事による。即ち、釈迦が霊鷲山(りょうじゅせん)で弟子10人を集めて説法をした時、梵王から献じられた金の華をひねって見せたところ、他の弟子たちはその意を解さず、ただひとり迦葉だけが仏陀の真意を理解してにっこり笑った。それをみて釈迦は、仏法の全てを迦葉に授けたというものである。この主題は明治30年、日本絵画協会第2回絵画共進会展で菱田春草によって初めて画題として取り上げられ、靫彦も当時実際に会場で春草の作品を見て大変感銘を受けたという。春草作品は横長の大画面に釈迦と10人の弟子を描いたものであったが、本図の場合は縦長の掛軸であることもあって、10人の弟子の姿はなく、差し出された華をひねって示す釈迦の姿に焦点がしぼられている。
本図の画題は、仏陀から第一の弟子、摩訶迦葉(まかかしょう)に正法が伝えられた故事による。即ち、釈迦が霊鷲山(りょうじゅせん)で弟子10人を集めて説法をした時、梵王から献じられた金の華をひねって見せたところ、他の弟子たちはその意を解さず、ただひとり迦葉だけが仏陀の真意を理解してにっこり笑った。それをみて釈迦は、仏法の全てを迦葉に授けたというものである。この主題は明治30年、日本絵画協会第2回絵画共進会展で菱田春草によって初めて画題として取り上げられ、靫彦も当時実際に会場で春草の作品を見て大変感銘を受けたという。春草作品は横長の大画面に釈迦と10人の弟子を描いたものであったが、本図の場合は縦長の掛軸であることもあって、10人の弟子の姿はなく、差し出された華をひねって示す釈迦の姿に焦点がしぼられている。