温泉好きの龍子は、筆労を癒すため、また家族連れでもたびたび修善寺温泉を訪れた。 この作品は、昭和2年の再興第14回院展に出品されたもので、定宿にしていた新井旅館で画想を得て制作された。宿の浴室には、入浴を楽しみながら、ガラス越しに庭池の魚をながめられる設えがなされている。画中の少女はこの設えに興味を示しているようである。入浴に少し飽きたのか、片足を浴槽の中にぶらつかせて魚をみている少女の姿が、仕切塀を利用した大胆な構図の中に置かれ、龍子独特の走るような筆致で描かれている。一見荒々しくみえる構図や筆致は、少女の可憐な様子を損なうことなく、むしろ際立たせている。画面裏には、「湯浴」と題名が記されているが、文献資料には「湯治」の題で記載されている。モデルは、龍子の三女紀美子と推定される。
温泉好きの龍子は、筆労を癒すため、また家族連れでもたびたび修善寺温泉を訪れた。
この作品は、昭和2年の再興第14回院展に出品されたもので、定宿にしていた新井旅館で画想を得て制作された。宿の浴室には、入浴を楽しみながら、ガラス越しに庭池の魚をながめられる設えがなされている。画中の少女はこの設えに興味を示しているようである。入浴に少し飽きたのか、片足を浴槽の中にぶらつかせて魚をみている少女の姿が、仕切塀を利用した大胆な構図の中に置かれ、龍子独特の走るような筆致で描かれている。一見荒々しくみえる構図や筆致は、少女の可憐な様子を損なうことなく、むしろ際立たせている。画面裏には、「湯浴」と題名が記されているが、文献資料には「湯治」の題で記載されている。モデルは、龍子の三女紀美子と推定される。